アルコールの代わりに音楽？そんなこともある！

音楽を聴いた後、酔ったように吐き気やめまいを感じる人もいます。音楽は聴覚受容器だけでなく、前庭器官にも影響を与えることが分かっています。

アルコールを飲まなくても酩酊状態になるというのは比喩的な表現ではなく、現実のことです。特定の周波数帯域の音の振動が、めまい、心拍数の増加、吐き気を引き起こすことを多くの人が指摘しています。このような反応は音楽だけでなく、特定の周波数帯域で再生された音にも見られます。専門家によると、このような症状は、聴覚器官に影響を及ぼす先天性欠損症を持つ人に発生するとのことです。この欠損症は三半規管裂開と呼ばれます。

人間の聴覚器官が何であるかは、ほとんどの人が知っています。それは、蝸牛、前庭器官、そして三半規管（前庭器官の一部）を形成する、中空の骨の集合体です。ほとんどの人では、聴覚部と平衡感覚部は骨膜によって隔てられています。しかし、90年前、科学者ピエトロ・トゥーリオは、この骨膜が非常に薄く、時には網目状になることもあることを発見しました。おそらく、これが音楽を聴いたときに感じる酩酊感に何らかの影響を与えているのでしょう。

特定の周波数範囲に属する音を再生する際に、内耳の「間違った」システムではどのような具体的なプロセスが発生するのでしょうか？ユタ大学の専門家たちは、人間と同様の聴覚器官と前庭器官を持つ特定の魚を例に挙げて説明しました。

魚類もヒトも、三半規管の空洞に特殊な液体媒体を持っています。体が動いて姿勢が変わると、この液体も動き始め、特殊な細胞構造がそれを感知して脳に信号を送ります。脳は反応として、筋肉の働きを調整し、バランスを保ち、視線を必要な点に維持します。蝸牛にも、音波の影響を受けて振動する液体が含まれています。この振動は聴覚器官によって感知されます。

聴覚器官と前庭器官の間の骨膜が薄すぎたり、穴があいていたりすると、聴覚器官を活性化させるはずの機械的振動が誤って前庭器官に伝わります。その結果、三半規管の細胞は人が動いていると「認識」し、脳はそれに応じて反応します。

聴覚膜の状態が著しく悪化すると、特定の周波数の音を聞くとめまいや吐き気を催すことがあります。科学者たちは、音には特定の周波数が必要であると強調しています。なぜなら、偽の音楽中毒はどんな騒音に対しても起こるわけではないからです。三半規管の裂開という形で現れるこの現象は、すべての人に起こるわけではなく、1000人中10人程度にしか起こりません。重症の場合は、外科的治療によって聴覚膜を矯正します。

この科学的研究の結果は、Scientific Reports (https://www.nature.com/articles/s41598-018-28592-7) に掲載されています。